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論文題目「ツインカソードアークの変動現象」

池末 陸

1. 諸
直流アークは高温プラズマの発生源として有用であり,鉄の溶融というプロセスに応用されている.陰極の数が多いツインカソードアークやトリプルカソードアークは高出力で単位時間あたりに多くのエネルギーを投入できることから,短時間,高効率で目的物の溶融が可能である.しかし,トリプルカソードアークやツインカソードアークに関する研究例は少なく,その基礎現象の解明には至っていない.アーク変動や電極現象などの基礎現象の理解は,長時間,効率的な操業のために必要不可欠である.

本研究ではトリプルカソードアーク変動現象の研究に先駆けて,ツインカソードアークの変動現象の理解を目的とした.カメラによるアーク変動とアーク面積の解析,また,オシロスコープを用いた電圧の測定を行った.

2. 実験装置および実験方法
本研究で用いたプラズマ発生装置ではグラファイト陰極を2本用い,陽極陰極間の距離は5 mm,アーク電流値は150 A,陽極に水冷銅を用い,装置内の圧力は101.3 kPaとした.チャンバーガスはArを20 L/min流し,シールドガスはArを陰極1本あたり15 L/min流した.陰極間距離を20,30,40 mmと変えて実験した. カメラとオシロスコープで同期観察を行った.

カメラによる観察はチャンバーの観察窓から行い,そのデータからアークの傾きを算出した.アークの傾きはアークがもう一方のアークに近づく方向を正とした.以下,アーク角度と呼称する.

3. 実験結果
アーク角度とアーク面積,電圧のそれぞれが増加,減少することとその時期において概ね相関がみられた.アーク角度が大きいときにはアノードジェットが発生している様子が確認され,アーク角度が小さいときにはアーク同士が接触している様子が確認された.また,前者の場合には電圧が高くなり,後者の場合には電圧が低くなったことが確認された また,前者の場合には電圧が高くなり,後者の場合には電圧が低くなったことが確認された.

陰極間距離が30 mm以下になったとき,ローレンツ力による影響が顕著にあらわれ,アーク角度が大きくなった.その結果,アノードジェットが頻出し,平均電圧も高くなった.アノードジェット発生時に電圧が高くなる理由は2つ考えられる.1点目は,2本あったアークが1本となることによる電流路面積の減少である.2点目は,Fig. 2中の画像Bに代表されるような,強烈なアノードジェット流によるアーク長の伸長である.

4. 結言
カメラとオシロスコープの同期観察によりツインカソードアークの変動現象の様子が観察でき,そこから,アーク角度とアーク面積,電圧の関係を明らかにできた.また,陰極間距離が減少することで,アーク角度の平均,平均電圧の増加がみられた.