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論文題目「ダイオード整流型交流アークを用いたプレーナープラズマジェットの発生と応用」

竹中凌

1.緒言
 近年,ダイオード整流を用いて多電極交流アークを発生させる革新的なプレーナー熱プラズマ発生源が開発された.エネルギー効率に優れていることに加え,原理上無限に長くすることができ高速かつ大面積での平面処理が可能という利点を有する.さらに,雰囲気制御をすることで酸化,還元,窒化処理が可能となる.
 酸素欠損型金属酸化物は,その優れた電気化学特性,触媒特性などから機能性材料として注目されている.本研究では,金属酸化物の水素還元による酸素欠損型金属酸化物の製造プロセスの検討を目的とした.

2.実験方法
 本実験で用いたダイオード整流型交流アークでは,4本の電極を1区画の構成電極とする.その内訳は,交流電極A,半波整流陽極B,交流電極C(Aの反転),半波整流陰極Dからなる.交流をダイオードによって整流することで両隣の電極間に交互にアークを発生させ放電を維持する.
 本実験では,雰囲気制御型のダイオード整流型交流アークを用いた.電極区画数を2区画,全電極にCu電極を用い,電圧値を120 V,水素ガス流量を0.5 L/min,アルゴンガスの流量を変化させることで水素濃度を20~50%,還元時間を2~20分の範囲で変化させた.原料にはWO3とNb2O5を用いた.還元後の試料は粉末X線回折(XRD)および走査型電子顕微鏡(SEM)により評価した.

3.実験結果と考察
 水素濃度50%,還元時間を2~20分の範囲で変化させ,WO3の水素還元を行った.生成物のモル分率をXRD分析結果から計算した.還元時間の増加に従って酸素欠損型金属酸化物の割合が増加し,還元時間20分の条件では,平均で44mol%に達した.熱力学的検討より,水素原子および水素分子による還元はいずれも自発的に進行することがわかっているため,どちらも還元に寄与していると示唆される.
 WO3原料および還元時間2分,20分における生成物の断面SEM画像において,原料粒子の断面は,粒子内部にひびが見られるが,細かい隙間は見られない.一方,2分還元した生成物は,繊維状の結晶が見られた.WO2.72は異方性成長挙動を示すことが報告されていることから[2],SEM画像からも還元時間2分でWO2.72が生成されていることが確認された.さらに,20分還元後の試料には還元によって生じた隙間の割合の増加がみられた.WO3の還元の過程で生成するWO2とWは小さい粒子の集合であることが報告されており,還元時間20分ではWO2とWまで還元が進行している部分もあることが確認された.

4.結言
水素還元により高機能性材料である酸素欠損型金属酸化物の製造に成功した.以上より,ダイオード整流型交流アークを用いた表面処理における応用可能性が示唆された.



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