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論文題目「ワイヤアーク溶射によるTi-Al金属間化合物の作製

佐藤正之

Ti−Al金属間化合物は比重が小さい、温度の増加に伴い強度が増加するなどの長所を持つ素材である。このため軽量の耐熱材料として注目され、タービンブレードやスペースプレーンの構造用材料として研究されている。金属間化合物皮膜は普通、プラズマ溶射や爆発溶射によって作製され、コストがかかるという欠点を持っている。

本研究ではTi−Al金属間化合物皮膜を安価に作成する方法としてワイヤアーク溶射を用いることを提案し、様々な溶射条件の影響を調べることを目的としている。アーク溶射は連続的に供給される2本のワイヤーを電極とし、その先端間に直流アークを発生させ、溶融したワイヤーを圧縮ガスにより基板に付着、積層させて皮膜を形成する溶射方法である。コアードワイヤーや合金ワイヤーを用いてアーク溶射による金属間化合物皮膜の作製が試みられているが、本研究ではより安価に作製するためにAlおよびTiを別々の電極ワイヤーとして供給し、溶射皮膜を作製した。

2種類の異なるワイヤーを供給する場合、電極の変動現象、溶射液滴の特性、皮膜の特性の関連が重要である。電極の変動現象(アークの安定性)をアーク電圧の変動、アークの発光強度の測定から解析した。溶射液滴の粒径分布をSEM(走査型電子顕微鏡)写真から、溶射液滴中の元素の分布をEDS(エネルギー分散型X線元素分析)によって、溶射液滴中のTi−Al金属間化合物の合成量をXRD(X線回折)によって解析した。溶射皮膜中の元素の分布をEDSによって、基板上の元素の分布をXRDによって、基板上のTi−Al金属間化合物の合成量をXRDによって解析した。

Tiを陰極にすると、陽極にした場合に比べアークは不安定となり、溶射液滴の粒径は大きくなる。これは、Ti陰極とAl陽極の溶融速度の差が大きいためだと考えられる。Ti−Al金属間化合物は基板上のTi液滴およびAl液滴の境界面で合成されていると考えられ、合成の促進には元素の偏在の抑制が必要である。Tiを陽極にすると基板上での偏在化が抑えられた。また、陽極は仕事関数分の熱を受け取り陰極より高温となるため、2種類の異なるワイヤーを用いる場合、高融点のワイヤーを陽極とするのが妥当である。よって、Tiを陽極とするとより多くのTi−Al金属間化合物が合成できる。アーク電流の増加によりTi−Al金属間化合物の合成量は増加した。アーク電流の増加に伴い、単位時間あたりの堆積量が増加し、基板への熱の流入量が増加する。これがTi−Al金属間化合物の合成を促進していると考えられる。

本研究では、2種類の異なるワイヤーを用いた場合の電極の変動現象を解析し、2種類の異なるワイヤーを用いることでアーク溶射により安価に金属間化合物皮膜を合成できる可能性を示した。


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