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論文題目「感温性高分子ゲルを保護剤とした液相還元法による白金ナノ粒子の形態制御

渡部 純

金属ナノ粒子の特性は粒径だけでなく形態にも依存することから,ナノ粒子の形態制御は使用量の削減と高性能化にとって重要である.当研究室ではこれまで,感温性高分子Poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPA)を保護剤として用いることで立方体のPtナノ粒子が優先的に得られることを見出している.そこで本論文では,Ptナノ粒子形態制御の高精度化を目指し,線状高分子であるPNIPAに代わり,NIPAゲル微粒子や他の高分子ゲル微粒子を保護剤として用いたPtナノ粒子の合成を行い,得られる粒子の形態について検討を行っている.

第1章は序論であり,本研究の背景や既往の研究,本研究の目的について述べている.

第2章では,Ptナノ粒子合成時の保護剤として用いるNIPAゲル微粒子およびN,N-dimethylacrylamide(DEAA)ゲル微粒子の合成とそのキャラクタリゼーションを行っている.その結果,sodium dodecyl sulfate(SDS)を用いた乳化重合により合成したゲル微粒子分散液(SDS混入ゲル微粒子分散液),透析処理によってSDSを除去した分散液(SDS除去ゲル微粒子分散液),SDSを再添加した分散液(SDS再添加ゲル微粒子分散液)では,ゲル微粒子に対するSDSの吸着状態が大きく異なることを明らかにしている.

第3章では,SDS混入NIPAゲル微粒子分散液を保護剤としてPtナノ粒子の合成を行い,SDS混入NIPAゲル微粒子分散液を用いることで,立方体のPtナノ粒子の割合をPNIPAを用いた場合よりも大幅に向上させることに成功している.また,Ptナノ粒子と同様の方法を用いてAu,Pd,Rhナノ粒子の形態制御を行うことが困難であることを明らかにしている.

第4章では,SDS混入DEAAゲル微粒子分散液を保護剤としてPtナノ粒子の合成を行い,異なる高分子ゲル微粒子を保護剤として用いた場合でも,立方体のPtナノ粒子が優先的に得られることを明らかにしている.

第5章では,Ptナノ粒子の形態に対するゲル微粒子とSDSの影響をそれぞれ検討するため,SDS除去ゲル微粒子分散液およびSDSを保護剤としたPtナノ粒子の合成を行い,立方体のPtナノ粒子を得るためにはゲル微粒子とSDSの両方が必要であることを明らかにしている.また,SDS再添加ゲル微粒子分散液を用いてPtナノ粒子を合成すると立方体の割合が低いことから,Ptナノ粒子の高度な形態制御にはゲル微粒子とSDSが共存した上で,ゲル微粒子に対するSDSの適切な吸着状態も必要であることも明らかにしている.

第6章では,各章で得られた結果について考察し,本研究の総括を行っている.

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