緒言
均一かつ高効率な材料表面処理への応用が期待されるプレーナー熱プラズマの発生源としてダイオード整流型交流アークが近年開発された.交流電源とダイオードを用いてアークを発生させることで平面状の均一なプラズマ場が形成される.しかし,現段階においては十分に均一なプラズマ場の形成は難しい.また,アーク変動等の基礎現象も十分に解明されていない. 本研究ではダイオード整流型交流アークの変動特性の解明を目的として,高速度カメラとオシロスコープを用いた同期観察と電圧波形の解析によるアーク変動の均一性評価を行った.
実験方法
本実験で用いたダイオード整流型交流アークの発生原理は次の通りである.4本の電極を1区画の構成電極とし,その内訳は互いに逆位相の電流が流れる交流電極AC(-
+)とAC(+ -),ダイオード整流させた電流が流れる半波整流陽極AN(+)と半波整流陰極CA(-)である.電極区画は直線状に複数配置でき,両端には電圧を印加しない中性点(NP)電極が配置される.各電極に周期的な電流が流れることでアークが点弧と消弧を繰り返す.アークの点弧位置は電極区画内で完結するCenter
Phaseと隣接区画や両端のNP電極にまたがるEdge Phaseの2種類であり,半周期ごとに交互に切り替わることで時間的に均一なプラズマ場が形成される.
本実験では二つの電極区画とNP電極の計10本を配置した.また,2種類の電極配置条件で実験を行った.1つ目は電極間距離がすべて10 mmの均一電極間距離条件である.2つ目はNP電極と隣接電極の電極間距離を5
mmとし,無負荷時のすべての電極間電界強度を等しくした均一電界強度条件である.電極1本あたりのシールドガス流量を3.0 L/minに固定し,アーク電流値80,
95, 110 Aでのアーク変動の様子を真上方向から高速度カメラとオシロスコープで同期観察した.また,測定でえられた電圧波形から各電極間の電界強度を算出し,互いの差が一定の値未満となる時間の割合を均一性と定義して各放電条件において評価した.
実験結果と考察
高速度カメラ観察より電極間でアークが点弧と消弧を繰り返す様子が確認できた.均一電極間距離条件ではNP電極へアークが点弧せず,電極列の中央方向へ長いアークが形成するような異常放電が観察された.一方で均一電界強度条件ではNP電極への安定的なアーク点弧が観察できた. F電流値による均一性の顕著な変化は見られなかった.また,いずれの電流値においても均一電界強度条件のほうが均一電極間距離条件よりも高い均一性であった.これはNP電極と隣接電極間の電界強度が上昇したことでNP電極へのアーク点弧が安定的におこり,異常放電の発生が抑えられたためである.
結言
高速度カメラとオシロスコープの同期観察によりアーク変動の様子が観察できた.電圧波形を用いたアーク変動の均一性評価より,均一電界強度条件において均一性が高くなることが明らかとなった.
業績は修士論文をご覧ください。