1.緒言
太陽系の始原的な物質である彗星由来の宇宙塵には,GEMS(glass with embedded metal and sulfide)とよばれる金属鉄と硫化鉄の粒子を含有した非晶質ケイ酸塩の微粒子が含まれている.GEMSは初期太陽系に存在した高温ガスの凝縮物であると考えられている.今回,GEMSの生成過程を解明するために高周波熱プラズマ用いてGEMSの再現実験を行った.高周波熱プラズマ装置は,原料を瞬時に蒸発,急冷させるほか原料蒸気は低分圧となるので宇宙空間の非平衡凝縮過程を模擬できる装置である.
これまでのGEMS再現実験は,GEMSの主要構成元素Si,Fe,Mg,Oに,場合によってSや微量元素(Na,Ca,Na,Ni)を加えた系で検証されてきた.しかし宇宙空間に普遍的に存在するHやCが含まれておらず,天然の環境とは化学種や凝縮温度が大きく異なっている.そこで,本実験では系にHおよびCを導入しSi,Fe,Mg,Oに微量元素を加えた系でGEMS再現実験を試みた.
2.実験方法
原料粉体はトーチ上部よりプラズマ中に投入され瞬時に蒸発し,均一核生成,不均一凝縮,粒子間凝集過程を経由しナノ粒子が合成される.合成されたナノ粒子はフィルター部より回収された.原料粉体にはMgO,SiO2,Fe,Al2O3,CaCO3,Na2CO3,Ni,C4H6O6の混合粉体を使用した.元素組成比[at.
%]は簡略化した太陽組成 [3]である,Mg : Si : Fe : Al : Na : Ca : Ni : C : O = 1 : 1: 0.85
: 0.085 : 0.06 : 0.06 : 0.05 : 8.5 : 16とした.実験条件は,周波数4MHz,投入電力30 kW,シースガス流量Ar
60 L/minおよびH2 0,0.5,2.1,4.4 L/min,キャリアガス流量Ar 5 L/min,インナーガス流量Ar 5 L/min,原料供給速度0.25
g/minとした.本実験では,水素ガス流量を変化させることで系の酸化還元雰囲気を変化させ,生成物の相や組織との対応関係を調べた.生成物の分析には粉末X線回折(XRD),透過型電子顕微鏡(S/TEM),エネルギー分散分光法(EDS)を用いた.
3.実験結果および考察
本実験では,いずれの条件においても,球形で平均粒径が20-40 nm程度のナノ粒子が合成された. すべての条件においてFeはα-FeおよびFeNiとして存在し,2θ
= 20-40deg.に非晶質ケイ酸塩に由来するハローが確認された.水素流量を増加させるほどα-Feのピークが顕著に現れる様子が確認された.
水素流量4.4 L/minにおける生成物をSTEM-EDSで分析した元素マッピングでは,いずれの条件でもFe金属粒子がMg,Feからなる非晶質ケイ酸塩中に内包されたコアシェル型粒子や均質な非晶質ケイ酸塩粒子が確認された.Niはコアの金属相中に存在し,Al,Ca,Naは非晶質ケイ酸塩中に分布していた.高水素流量ではコアシェル型粒子の割合が増加し,低水素量では非晶質ケイ酸塩のFeの含有量が増加した.この傾向は本実験の水素流量の範囲内で鉄の価数が変化したことを示唆している.低水素流量では原料中の一部のFeが酸化されてFe2+となりケイ酸塩相に取り込まれたと考えられる.
4.結言
本実験では,水素流量を増加させるほど,GEMSの特徴を有したナノ粒子の割合も増加した.本研究がGEMSの成因の解明につながることが期待される.
国内学会