
渡辺研究室で行われている主な研究は、熱プラズマに関する研究と、蓄熱やヒートポンプ等のエネルギーに関する研究です。現在進行中の研究と、最近行われた研究を紹介します。これらの研究テーマに関する研究成果の一覧もご覧下さい。

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研究室紹介のパンフレット
「プラズマ化学による廃棄物処理と材料合成への挑戦」 |
研究紹介のパンフレット
「プラズマによる廃棄物処理」 |
研究紹介の英語版パンフレット
「Waste Treatment by Atmospheric Pressure Plasmas」 |
研究紹介のパンフレット
「プラズマ流体工学による廃棄物処理と材料合成」 |
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熱プラズマのモデリング
材料プロセシングにおいて熱プラズマを有効に活用するには,数値シミュレーションを用いて熱プラズマの温度や速度分布を解析することが重要です。特にプラズマ中の化学反応を考慮した数値解析により,新しい誘導結合型プラズマトーチの開発,プラズマ中の化学種の挙動の解明,ナノ粒子やナノチューブ合成システムの開発を行っています。
従来は熱平衡状態として扱ってきた熱プラズマですが,我々の数値解析によって熱プラズマ中の化学反応過程の非平衡性の重要性を明確にすることができました。これらの数値解析の結果をプラズマプロセシングの開発に役立てています。
従来のプラズマによるナノ粒子合成では,目的の組成や粒径を備えたナノ粒子を得るためには,数多くの実験を繰り返しながら経験的に合成条件を調整しなければなりませんでした。プラズマ材料プロセスにおいて熱プラズマを単に高温流体としても用いるだけの研究は数多くありますが,材料合成プロセスを解明して,熱プラズマの特性を定量的に把握する研究が遅れています。熱プラズマを用いる材料プロセスを実用化するには,経験的な合成実験に頼るのではなく,製品として望まれる組成と粒径を有するナノ粒子を合成するために,実験結果に裏付けられたモデリングの開発が必須です。
熱プラズマによるナノ粒子合成プロセスは,電磁流体としてのプラズマ流の複雑性が原因となり,計測による熱流動場の把握には限界があります。また急冷状態におけるナノ粒子の合成プロセスは核生成,凝縮,ナノ粒子間の凝集などのプロセスがマイクロ秒オーダーで同時に起こるので,その観測も極めて難しいです。よってプロセスの物理・化学的な現象を把握するには,プロセス全体にわたる物理モデルを導入し,数値解析を用いて理論的にアプローチすることが有効な手段となります。ナノ粒子の生成プロセス全体をモデル化には,3つの物理現象が含まれます。3つの物理現象とは,(1)プラズマの熱流動,(2)原料の蒸発プロセス,(3)ナノ粒子の生成プロセスです。これらを1つの方程式系として定式化するには流体力学のみならず,電磁気学,伝熱学,反応速度論など多岐に渡る物理モデルを現象とプロセシングの種類に応じて体系化する必要があります。
このような手法に基づき,我々は、熱プラズマによるナノ粒子の合成条件から,どのようなナノ粒子が合成されるかをあらかじめ予測できるソフトウエアプログラムを開発しました。プラズマの種類,プラズマガスの種類と流量,反応性ガスの濃度,ナノ粒子の原料の種類と形状,ナノ粒子の回収位置などを条件として与えると,ナノ粒子の組成分布や粒径分布などを推定することが可能となりました。従来の手法では,目的の組成や粒径を備えたナノ粒子を得るために実験を繰り返しながら,経験的に合成条件を調整しなければなりませんでしたが,我々のモデリングはそのようなプラズマプロセシングの欠点を改善することに役立っています。
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アルゴンRFのトーチとナノ粒子反応管の温度分布です。プラズマトーチから出るとプラズマが急冷されており,ナノ粒子の合成に適していることがわかります。
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詳細は以下の解説をご覧ください.
- 渡辺隆行: 高周波誘導熱プラズマの物理・化学過程, プラズマ・核融合学会誌, 72 (2), p.134-141 (1996.2).
- 田中康規, 渡辺隆行: 熱プラズマにおける非平衡性, プラズマ・核融合学会誌, 82 (8), p.479-483 (2006.8).
- 渡辺隆行, 田代真一: 熱プラズマの解析に用いられる電磁熱流体モデル, プラズマ・核融合学会誌, 87 (8), p.514-521 (2011.8).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングのフロンティア, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会 第117回研究会講演資料, p.28-35 (2014.6).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセスの基礎と応用, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.70, p.16-23 (2019.6).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの基礎, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会第145回研究講演会資料, p.10-19 (2020.6).
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アルゴンプラズマと酸素プラズマの温度分布を比較してます。酸素プラズマでは酸素の解離・再結合反応速度,電離反応速度を考慮して数値解析を行いました。1万度以上の高温領域が放電部分に発生しています。
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アルゴンRFプラズマの温度分布と流線です。1万度以上の高温領域が放電部分に発生し,さらにこの領域ではローレンツ力による渦が発生しています。
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熱プラズマによるガラス溶解技術の開発
我が国のガラス産業は、全産業の約1%に相当するエネルギーを消費するエネルギー多消費型産業であり、その量は原油換算で毎年約200万kLにも及びます。特にガラス溶融工程に必要なエネルギーコストの削減の必要性が強く認識されており、エネルギー効率の向上、コスト低減の観点から、さまざまな改良が行われています。伸び続けるガラス製造量の増加に対し、単位ガラス量を溶解するために必要なエネルギーは減少し、溶解プロセスの省エネルギー化が押し進められてきました。しかし溶融状態のガラスが高粘度であることから、品質確保のために数日間の加熱エネルギーの投入が必要となっています。さらに、平面ディスプレイ等に使われる高付加価値のニューガラスは需要が増しており、要求される品質が厳しくなっていることから、エネルギー消費量は増大する傾向にあります。
ガラス製品の大部分は、大きな炉の中で原料を加熱して溶解し、泡や組成の偏りがなくなるまで高温に保持されます。実用ガラスの大部分を占めるソーダ石灰ガラスの場合、1500-1600℃で溶かして保持することにより製造されています。高温に保持する時間は製品により様々ですが、容器や食器で約1.5日、自動車用のフロントガラスで約5日、液晶ディスプレイ用のガラスではそれ以上の日数を要します。ガラス製造に使用されるエネルギーの大部分が、原料を高温で溶融して製品に使用可能な品質の融液を得る段階、すなわち、溶融過程で消費されています。
ガラスの製造の省エネルギー化はガラス原料の溶融過程の見直しが効果的であり、今までに様々なガラス溶融技術が考案されています。従来に用いられているシーメンス型溶解炉の高効率化だけでなく、非シーメンス型の新規のガラス溶融技術の開発も進められています。この新規のガラス溶融技術のなかで、我々は気中溶解技術の研究を行っています。これはガラス微粉原料を造粒し、それを高温気中で瞬時に溶解(in-flight melting)する方法です。この技術は未だかつて何人も試みたことはなく幾多の困難が予想される反面、成功すれば大半のガラス製造プロセスに適用され、溶融炉の大幅な小型化と消費エネルギーの大幅な削減が期待できます。
インフライト溶融法は、そのような背景のもと、NEDO研究開発機構エネルギーイノベーションプログラムにおいて、「革新的ガラス溶融プロセス技術開発」として技術関発を進めています。このプロジェクトは平成20年度から24年度の5年間の予定で実施されています。詳細はこちらをご覧ください。特に、我々は、誘導結合型プラズマあるいは多相アークを用いて,気中溶解によるガラス化反応を行うプロセスを開発し,気中加熱実験設備を製作するための研究開発を行っています。
誘導結合型熱プラズマ中に微粒子状のガラス原料を供給し,ガラスの気中溶解を行うことにより,ガラス溶解を高速で行うことが可能であることを明らかにしました。ガラス原料の粒径が100μm程度であればほぼ100%のガラス化反応が数μsで完了することから,熱プラズマによる気中溶解プロセスはガラス製造において有効な方法であることを明らかにしました。
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多相アークによるインフライトプロセスによるガラス溶解の概念図です。

プラズマによるインフライトプロセスによって製造したガラスです。
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詳細は以下をご覧ください。
- 新溶解技術プロジェクト
- 革新的ガラス溶融プロセス技術開発プロジェクト
- NEDO30年史「革新的ガラス溶融プロセス技術開発」ダウンロードはこちら(PDF 80 Mb)
- 渡辺隆行, 井上悟, 矢野哲司, 伊勢田徹, 酒本修, 佐藤敬蔵: 熱プラズマを用いたインフライト溶融による革新的ガラス製造技術, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会第86回研究会講演資料, p.35-41 (2008.5).
- 渡辺隆行: インフライト溶融によるガラス製造のための熱プラズマ発生技術, NEW GLASS, 25 (1), p.35-39 (2010.3)
- 渡辺隆行, 田中学: 熱プラズマ中のインフライト溶融粒子の温度計測, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会第103回研究会講演資料, p.31-38 (2011.12).
- 渡辺隆行: 熱プラズマによる革新的ガラス溶融プロセス, NEW GLASS, 27 (1), p.45-48 (2012.3).
- 伊勢田徹, 渡辺隆行: 革新的ガラス製造技術, 化学工学, 77 (3), p.188-191 (2013.3).
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多相交流アークシステムの開発
ガラスの製造の省エネルギー化はガラス原料の溶融過程の見直しが効果的であり、今までに様々なガラス溶融技術が考案されています。従来に用いられているシーメンス型溶解炉の高効率化だけでなく、非シーメンス型の新規のガラス溶融技術の開発も進められています。この新規のガラス溶融技術のなかで、我々は気中溶解技術の研究を行っています。これはガラス微粉原料を造粒し、それを高温気中で瞬時に溶解(in-flight melting)する方法です。この技術は未だかつて何人も試みたことはなく幾多の困難が予想される反面、成功すれば大半のガラス製造プロセスに適用され、溶融炉の大幅な小型化と消費エネルギーの大幅な削減が期待できます。
ガラス造粒原料のインフライト溶融に不可欠なプラズマ加熱技術は、エネルギー効率とガラス品質の点から多相アークと酸素燃焼炎とのハイブリッド加熱が有望と考えられます。しかし、酸化性雰囲気で使用できる多相プラズマ技術やハイブリッド加熱技術に関する既存の報告は全く存在しません。冷却機能を有する金属電極の適用により、これらの技術を新たに開発し気中加熱技術の基礎を確立することを目的とした研究を行っています。
インフライト溶融法は、そのような背景のもと、NEDO研究開発機構エネルギーイノベーションプログラムにおいて、「革新的ガラス溶融プロセス技術開発」として技術関発を進めています。このプロジェクトは平成20年度から24年度の5年間の予定で実施されています。詳細はこちらをご覧ください。
特に、我々は多相アークを用いて,気中溶解によるガラス化反応を行うプロセスを開発し,気中加熱実験設備を製作するための研究開発を行っています。多相アークは、12本からなる電極間に交流電圧を順次組み合わせを変えながら印加してアーク放電を生じさせ、電極の間にある空間に熱プラズマを形成する新しいプラズマ形成法です。電力から熱プラズマへのエネルギー変換効率が高く、プラズマ流速が遅いことから粒子の飛翔過程での加熱効率が高いこと、最大出力の大きいものが実現可能であること、大容積のプラズマの形成が可能であることなどの利点を有しており、ガラス原料の溶融に適していると考えられます。
  
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詳細は以下の解説をご覧ください.
- 渡辺隆行: インフライト溶融のための熱プラズマ発生技術, NEW GLASS, 28 (110), p.10-13, (2013.11).
- 田中学, 渡辺隆行: 熱プラズマの発生技術と応用(多相交流アーク), 化学工学, 78 (5), p.308-311 (2014.5).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングのフロンティア, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会 第117回研究会講演資料, p.28-35 (2014.6).
- 渡辺隆行: 熱プラズマ材料科学のマイルストーン, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会 30周年記念講演会資料 (2017.7).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの今後の展望, プラズマ・核融合学会誌, 95 (1), p.34-35 (2019.1).
- 田中学, 渡辺隆行: 多相交流アークの生成と計測, プラズマ・核融合学会誌, 95 (1), p.20-26 (2019.1).
- 渡辺隆行, 橋詰太郎, 田中学: 熱プラズマ流の可視化による物理・化学的変動現象の解明, スマートプロセス学会誌,8 (2), p.38-45 (2019.3).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセスの基礎と応用, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.70, p.16-23 (2019.6).
- 田中学, 渡辺隆行: 熱プラズマを用いたナノ粒子の大量合成技術確立に向けて, 粉体工学会誌, 56 (8), p.459-467 (2019.8).
- 渡辺隆行: 産業の発展における熱プラズマの役割と今後の課題, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.72, p.7-10 (2020.6).
- 田中学, 渡辺隆行: 革新的な機能性材料プロセシングと廃棄物処理手法の確立, 電気学会誌, 140 (6), p.358-361 (2020.6).
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大気圧100%水プラズマトーチの開発
我々が開発した直流放電を用いたフロン分解処理システムは,プラズマガスとして水蒸気のみを用いてアークを発生し,プラズマの高温領域にフロンを直接噴射して分解を行う方法です。通常の水プラズマといわれているものではアルゴンガスを用いてプラズマを発生し,放電領域の下流に水蒸気とフロンを供給する方法ですが,本装置では水蒸気のみを用いており,アルゴンなどのガスを全く使用していないことが特徴です。
大気圧で水のみでプラズマを発生することができれば,廃棄物処理や材料合成にとって非常に好都合です。ただし従来は高周波プラズマやマイクロ波プラズマで水プラズマを発生していました。これらのプラズマシステムは電源が高価なので,廃棄物処理に用いるには,電源が安価な直流放電を用いるほうが適しています。
燃焼反応を用いた高温プロセスでは,燃焼ガス中に生じる物質によって目的反応が阻害されますが,プラズマではそのような作用を避けることができます。特に,水蒸気を用いたプラズマの生成は,フロン分解において大きな利点となります。フロンは高温にすれば容易に分解できますが,そのままでは分解ガスは下流の低温領域においてCF4などの副生成物を合成してしまいます。このような再結合反応を抑制するためには,水素と酸素が分解ガスとともに存在することが望ましいのですが,プラズマ中に水素と酸素を供給するよりも,水蒸気をプラズマガスとして用いるほうが経済上および安全上優位です。
ここで示すフロン分解装置を用いて,代替フロンであるHFC134a (CH2FCF3)の分解処理を行いました。大気圧下の直流放電によるプラズマ発生装置によって,HFCの分解および分解生成物の回収が可能であり,他のフロンの分解も同様に行うことができます。通常の直流放電アークでは電極を熱から保護するために冷却水を用いているが,この装置の最大の特色は,その冷却水を直接放電領域に吹き込み,それをプラズマガスとして使用することです。この方式によって,通常は必要であるプラズマガス用のボンベが不要となり,さらに冷却水による熱損失がなくなることになるので,熱効率は90%以上が得られています。
高温の水蒸気プラズマにおいてHFC134aは直ちに分解されます。下流では副生成物であるCF4生成等の再結合反応を起こさないように急冷し,分解ガスを水に吸収させます。プラズマパワーに対するHFC-134aの供給速度が最大0.43 mmol/kJ (1 kWあたり160 g/h) において,フッ素回収率99.9%以上が得られました。なお,実験を行ったHFC134aの供給量の範囲では,分解後の排ガス中に未分解のHFC134aおよびCF4等の再結合フロン類は検出されていません。
- 岩尾徹, 渡辺隆行, 天川正士, 稲葉次紀, 西脇英夫: 熱プラズマを用いた廃棄物処理の現状と新展開, プラズマ・核融合学会誌, 82 (8), p.497-502 (2006.8).
- 渡辺隆行: 水プラズマによる廃棄物処理プロセス, 日本機械学会流体工学部門ニューズレター「流れ」 (2007.12).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの開発, 日本学術術振興会プラズマ材料科学第153委員会 第118回研究会講演資料 (2014.10)
- 渡辺隆行: 熱プラズマ材料科学のマイルストーン, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会 30周年記念講演会資料 (2017.7)
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの今後の展望, プラズマ・核融合学会誌, 95 (1), p.34-35 (2019.1).
- 渡辺隆行: 水プラズマ放電現象と廃棄物処理への応用, 応用物理, 87 (12), p.907-911 (2018.12).
- 渡辺隆行: 水プラズマによる廃棄物からの水素製造, プラズマ・核融合学会誌, 95 (1), p.27-33 (2019.1).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセスの基礎と応用, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.70, p.16-23 (2019.6).
- 渡辺隆行: 産業の発展における熱プラズマの役割と今後の課題, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.72, p.7-10 (2020.6).
- 田中学, 渡辺隆行: 革新的な機能性材料プロセシングと廃棄物処理手法の確立, 電気学会誌, 140 (6), p.358-361 (2020.6).
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熱プラズマによる廃棄物処理
環境問題の解決のための先端基盤技術のひとつとして熱プラズマ技術があります。熱プラズマ技術はPCBやフロンなどの特殊な産業系廃棄物,および灰溶融などの大規模な一般廃棄物処理に適用されています。我々は従来のプロセスでは処理できない難分解物質を熱プラズマによって処理する方法を開発しています。特にオゾン層破壊物質および地球温暖化物質であるフロンやハロンを水蒸気プラズマによって分解するシステムの開発を行っています。
廃棄物処理に熱プラズマが適している理由は,熱プラズマ中では電子のみならずイオンや原子などの重い粒子も高温度であり,かつエネルギー密度が大きいので,処理対象物質を短時間で高温にすることができることです。また,化学反応速度は温度に対して指数関数的に増大するので,熱プラズマ中では反応速度が著しく大きくなります。さらに,高温状態の物質を急速に冷却することによって有害な副生成物の生成を阻止することができます。
プロセスのスタートアップやシャットダウンを迅速に行うことができること,ガスの使用量が少ないので排ガスシステムへの負担が小さいことなどから考えても,熱プラズマを用いる優位性があります。熱プラズマの優位性は,雰囲気を自由に選べることにもあります。アルゴンやヘリウムを用いた不活性雰囲気,酸素を用いた酸化雰囲気,水素を用いた還元雰囲気などを自由に選択できるので,廃棄物処理には好都合です。
強い反応性および選択性を有する水素プラズマ等を活用することにより、各種の混合物から特定の金属またはセラミックスを分離することができます。放射性廃棄物の処理をはじめとして、石炭飛灰や焼却灰からの有価金属回収や無害化を目的とした物質分離現象の解明に関する研究を行っています。
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熱プラズマによって廃棄物から水素を合成するシステムの概念図

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アルゴン/水素プラズマジェットで模擬試料を溶融させている写真。白く発光しているのが1万度以上のプラズマジェットです。
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酸素プラズマで処理したコバルトを吸着したイオン交換樹脂。酸素プラズマによってイオン交換樹脂の質量は5%程度までに減少します。さらに放射性元素は残渣中に固定化することができます。
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詳細は以下の解説をご覧ください.
- 岩尾徹, 渡辺隆行, 天川正士, 稲葉次紀, 西脇英夫: 熱プラズマを用いた廃棄物処理の現状と新展開, プラズマ・核融合学会誌, 82 (8), p.497-502 (2006.8).
- 渡辺隆行: 水プラズマによる廃棄物処理プロセス, 日本機械学会流体工学部門ニューズレター「流れ」 (2007.12).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの開発, 日本学術術振興会プラズマ材料科学第153委員会 第118回研究会講演資料 (2014.10).
- 渡辺隆行: 熱プラズマ材料科学のマイルストーン, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会 30周年記念講演会資料 (2017.7).
- 渡辺隆行: 水プラズマ放電現象と廃棄物処理への応用, 応用物理, 87 (12), p.907-911 (2018.12).
- 渡辺隆行: 水プラズマによる廃棄物からの水素製造, プラズマ・核融合学会誌, 95 (1), p.27-33 (2019.1).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの今後の展望, プラズマ・核融合学会誌, 95 (1), p.34-35 (2019.1).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセスの基礎と応用, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.70, p.16-23 (2019.6).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの基礎, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会第145回研究講演会資料, p.10-19 (2020.6).
- 渡辺隆行: 産業の発展における熱プラズマの役割と今後の課題, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.72, p.7-10 (2020.6).
- 田中学, 渡辺隆行: 革新的な機能性材料プロセシングと廃棄物処理手法の確立, 電気学会誌, 140 (6), p.358-361 (2020.6).
プラズマによる廃棄物処理に関しては,こちらの解説もご覧ください。 |
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熱プラズマによるナノ粒子の合成
ナノ粒子とは,粒径が数nm〜数十nmの金属やセラミックスなどの粒子です。粒子を構成する金属やセラミックスの性質が強められたり,新しい機能を備えたりすることから,さまざまな応用が可能になると期待されています。セラミックスのナノ粒子(窒化物,酸化物,炭化物,ホウ化物等)や合金のナノ粒子を熱プラズマにより作製できます。熱プラズマを用いたナノ粒子は粒径が小さいこと以外に,準安定相や非平衡組成の生成が可能であることに特徴があります。
ナノ粒子を合成する方法はいくつか存在しますが,なかでも,大気中に発生させた熱プラズマを使う方法はナノ粒子を高速で製造できるため,大量生産に向いています。熱プラズマによるナノ粒子の合成では,上流の高温領域に原料を供給し,蒸発させ,それから下流の低温領域で原料を凝縮させ,ナノ粒子を合成します。また水素プラズマアーク中で原子状に解離した活性化学種により,溶融金属からナノ粒子を合成する方法もあります。
熱プラズマを用いるナノ粒子合成のプロセシングでは,2つのプロセスを制御することが重要です。つまり,10,000℃程度のプラズマの高温領域における原料の蒸発プロセスと,下流の低温領域で1000℃程度まで急冷することによって起きる均一核生成プロセスです。ナノ粒子合成プロセスは,急冷過程においてマイクロ秒オーダーで起こる核生成や凝縮,クラスター間の凝集が重要であり,このプロセスを制御することが熱プラズマプロセシングの利点を活かすことになります。ナノ粒子の組成や結晶系を制御するのは,気相から凝縮相へ相変化する均一核生成と不均一凝縮の段階であり,最終的な生成物の特性を決めるのに重要なプロセスです。つまり熱プラズマが有する高温,高活性,さらに高速のクエンチングプロセスを利用することが,熱プラズマによるナノ粒子合成プロセシングの特色となっています。この特色を活用するによって,従来にはない形態,結晶構造,化学組成の材料を合成することが可能です。
熱プラズマによるナノ粒子合成プロセシングは,ナノ粒子の生成量が比較的多いこと,要求されるナノ粒子の特性に応じて原料や雰囲気を自由に選択できることが長所です。その長所を活かすために,大気圧近傍で発生する高周波(RF)プラズマと直流アーク(主にフリーバーニングアーク)が用いてナノ粒子合成の研究を行っています。
我々は、熱プラズマによって酸化物系ナノ粒子(アルミナ,チタニア,シリカ)を効率よく生成し、ナノ粒子の粒径を制御する方法を確立しました。また,ホウ化物系ナノ粒子(LaB6,CeB6),金属間化合物系ナノ粒子を合成することもできました。
Ti,Ta,Nb,Mo,Co,Fe,Cr,V,Mn,Al,Siなどを原料として窒化物系ナノ粒子を合成する研究では,特にナノ粒子の生成過程を解明することができました。

直流アークによるナノ粒子合成のしくみです。
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高周波熱プラズマによるナノ粒子合成装置です。
高周波熱プラズマで合成したLiMn2O4ナノ粒子。リチウムイオン電池の電極材料としての応用が期待されています。
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詳細は以下の解説をご覧ください.
- 渡辺隆行, 田中康規: 熱プラズマによるナノ粒子の合成, プラズマ・核融合学会誌, 82 (8), p.484-487 (2006.8).
- 田中康規, 渡辺隆行: 熱プラズマにおける非平衡性, プラズマ・核融合学会誌, 82 (8), p.479-483 (2006.8).
- 渡辺隆行: 熱プラズマによるナノ粒子の合成, エアロゾル研究, 21 (3), p.201-208 (2006.9).
- 渡辺隆行, 茂田正哉: 熱プラズマプロセスによるナノ粒子合成, 応用物理学会誌, 77 (9), p.1098-1102 (2008.9).
- 渡辺隆行: 熱プラズマによるナノ粒子の合成〜金属、合金、金属間化合物を中心として〜, 表面技術, 59 (11), p.718-723 (2008.11).
- 渡辺隆行: 熱プラズマの非平衡性を利用するプロセスと高温を利用するプロセス, プラズマ・核融合学会誌, 85 (2), p.83-87 (2009.2).
- 渡辺隆行: 熱プラズマによる材料プロセッシング〜非平衡プラズマとの違い〜, 表面技術, 60 (6), p.365-370 (2009.6).
- 渡辺隆行, 田中学: 熱プラズマによるナノ粒子の合成とその機能発現, 粉体工学会誌, 48 (9), p.632-640 (2011.9).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの展望, 化学工学, 78 (5), p.300-301 (2014.5).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングのフロンティア, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会 第117回研究会講演資料, p.28-35 (2014.6).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの開発, 日本学術術振興会プラズマ材料科学第153委員会 第118回研究会講演資料 (2014.10).
- 渡辺隆行: 熱プラズマを用いた材料プロセッシングの新展開, 耐火物技術協会誌, 69 (6), p.266-274 (2017.6).
- 渡辺隆行: 熱プラズマ材料科学のマイルストーン, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会 30周年記念講演会資料 (2017.7).
- 渡辺隆行, 田中学, 野中侃, 林田梨里子: リチウムイオン電池の材料開発における熱プラズマの役割, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会第136回研究会講演資料, p.28-34 (2018.6).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの今後の展望, プラズマ・核融合学会誌, 95 (1), p.34-35 (2019.1).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセスの基礎と応用, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.70, p.16-23 (2019.6).
- 田中学, 渡辺隆行: 熱プラズマを用いたナノ粒子の大量合成技術確立に向けて, 粉体工学会誌, 56 (8), p.459-467 (2019.8).
- 渡辺隆行: 熱プラズマプロセッシングの基礎, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会第145回研究講演会資料, p.10-19 (2020.6).
- 渡辺隆行: 産業の発展における熱プラズマの役割と今後の課題, 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会会報, No.72, p.7-10 (2020.6).
- 田中学, 渡辺隆行: 革新的な機能性材料プロセシングと廃棄物処理手法の確立, 電気学会誌, 140 (6), p.358-361 (2020.6).
ナノ粒子合成に関しては,こちらの解説もご覧ください。
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大気圧非平衡プラズマプロセシングの開発
大気圧非平衡プラズマは室温近傍で高い化学反応性を示すことから,材料プロセシング,廃棄物処理プロセシングなどに広く利用されています。また,大気圧中でのプロセスは産業応用において大きな利点となります。特に大気圧非平衡プラズマの発生法のひとつである誘電体バリア放電を用いて,各種のリサイクルプロセスへの応用に関する研究を行っています。
環境問題の解決のための先端基盤技術のひとつとして大気圧プラズマ技術があります。大気圧プラズマによる廃棄物処理システムは、従来の方法では処理が困難だった廃棄物を処理でき、迅速なスタートアップやシャットダウンが可能であり、エネルギー効率が高いという特徴があることから、排ガス処理、VOC分解、リサイクルプロセス等に用いられています。
大気圧グロー放電を安定に起こすには、数kHz以上の交流電圧を印加すること、電極間に誘電体を挿入すること、ヘリウムを利用することなどの条件を満たすことが必要です。ヘリウムがグロー放電を形成しやすい理由として、他のガスに比べ放電開始に必要な換算電界が極めて低いこと、低換算電界下において高い電離係数を有することが挙げられます。また、ヘリウムの準安定励起種によるペニング電離が低電界において実効的な電離係数を上昇させていることも理由のひとつとして考えられています。
大気圧非平衡プラズマの主な特徴は、真空装置等の設備を必要とせず比較的安価に装置が組めること、プラズマのガス温度が低く電子温度が高いため多量のラジカル発生が期待できることから、被処理物質の選択肢が広がることが挙げられます。そのため様々な産業プロセスへの応用が期待され、近年注目されているプラズマです。
廃棄物処理プロセスとしてプラズマ技術が適している理由は,短パルス電圧を印加するによってイオンや中性分子の加熱を避けることができるので、エネルギー効率が高いことです。また、プラズマ中の高活性種によって、処理速度や反応速度を速くできること、選択的な物質の処理が可能であること、迅速なプロセスのスタートアップやシャットダウンが可能であること,ガスの使用量が少ないので排ガスシステムへの負担が小さいことなども廃棄物処理に適している理由です。
プラズマを発生するパルス周波数やガス組成を変えることによってプラスチックの分解速度を制御する方法を開発しました。表面処理プロセスにおいて処理対象物の性質やプロセスの目的に応じて,プラズマ中の活性種を制御できるので,大気圧プラズマを様々な分野に応用できることが可能となります。特にプラズマによる材料の分解速度の違いを利用することによって,廃プラスチックのリサイクルプロセスへ適用することができます。
また,食品の腐敗防止に用いられている殺菌方法は熱、紫外線、薬剤等があります。薬剤を用いた殺菌ではその毒性に問題があり、熱による殺菌ではエネルギーの浪費やタンパク質の編成による味の低下などが問題となります。
我々は低温条件下での新しい殺菌法として、無声放電を利用した大腸菌の殺菌方法の研究を行い、その殺菌機構を解明しました。無声放電による殺菌では、空気または酸素雰囲気で最大の殺菌効果が得られ、窒素雰囲気ではやや劣るが有意な殺菌効果が得られます。これらの殺菌効果は放電電流による菌体の損傷、および放電により生成したオゾンや窒素酸化物が原因と考えられます。
無声放電は電極間に誘電体を挟んだ交流放電で、誘電体相により電流が制限されるので、温度上昇を伴いません。この装置を用いる利点としては、大気圧下の処理なので真空装置が不要であること、放電装置の構造が非常に簡単であること、加えるエネルギーが小さいことです。
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アーク溶射を利用した材料合成
ワイヤアーク溶射は連続的に送給される2本のワイヤを電極とし、その先端に直流アークを発生させ、ワイヤを溶融させる溶射方法です。溶融したワイヤが圧縮ガスにより吹き飛ばされて生成した溶融液滴が基板に付着および積層して溶射被膜が形成されます。
ワイヤアーク溶射の長所は,電極そのものが溶融するので,大量溶射が可能なことです。そのために施工時間を大幅に短縮することができます。またワイヤアーク溶射ではほとんどの入力エネルギーの溶解に使われるので,エネルギー効率が各溶射法の中で最高でおよそ90 %です。次にワイヤアーク溶射ではノズル等において水冷を必要とせず,電気と圧縮空気のみを必要とするので,運転経費が安いことも大きな長所です。プラズマ溶射に比べてワイヤアーク溶射は初期コストがおよそ5分の1,運転コストはおよそ9分の1であり,経済的に有利な溶射方法です。
ワイヤアーク溶射は非常に経済的な溶射方法ですが、多量のヒュームの発生や溶射被膜の特性に問題があります。これらを解決できればワイヤアーク溶射の新しい展開が期待できます。溶射被膜の品質向上を目的とし、ワイヤアーク溶射の電極現象やヒュームの発生機構を解明しています。またワイヤアーク溶射を用いて金属間化合物等の新しい材料プロセスの開発に関する研究を行っています。
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ワイヤアーク溶射の高速度写真です。アルミニウムワイヤ(上部が陰極、下部が陽極)から生成する液滴の様子がわかります。
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詳細は以下の解説をご覧ください.
- 渡辺隆行, 薄井宗光: ワイヤアーク溶射における溶融粒子の酸化現象に及ぼすアトマイジングガスの影響, 化学工学シンポジウムシリーズ, 67, p.45-52 (1999.2).
- 渡辺隆行, 神沢 淳, Joachim Heberlein, Emil Pfender: ワイヤアーク溶射の新しい展開, 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会第29回研究会講演資料, p.14-21 (1995.7).
- 田中学, 渡辺隆行, 伊佐太磨喜, 西脇英夫: 溶接・溶射アークの新展開, プラズマ・核融合学会誌, 82 (8), p.492-496 (2006.8).
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月資源利用技術の開発
月面での活動が宇宙開発のステップアップには欠かせないものであることから,宇宙開発計画において重要な位置を占めている項目の一つに,月面基地建設があります。将来,人類が月面活動を行うときに水,酸素は必要不可欠です。それらを地球から輸送するのは大変コストがかかるので,経済的な月面活動を実現するためには,月資源を利用した水および酸素製造が有効であると考えられています。
月資源を利用して水を製造することができれば,生成した水を電気分解することにより酸素の抽出も可能であり,この場合には水素が再利用できます。現在まで報告されている20以上の月資源からの水製造プロセスに対して,エネルギー,原料,技術等の観点から実現可能なプロセスの順位付けが行われていますが、このうち、FeOを多く含むガラス質の水素還元が2番目にランクされており、イルメナイトの水素還元は4番目にランクされています。水素を用いた還元反応はプロセスが簡単であることが魅力であり,現在のところ研究が最も進んでいます。
我々は月面における月土壌の水素還元による水製造加熱反応炉およびその製造プロセスの開発を目的とした研究を行っています。特に水素還元反応における反応工学的研究を行っています。月土壌の水素還元により水を生成する反応器を完成させ,月土壌シミュラントを用いて実際に水を製造することに成功しました。様々なプロセスが考えられている月土壌からの酸素製造において,水素還元プロセスは酸化物から酸素の抽出・分離が容易で,かつ還元剤である水素を再利用できるという点から効率的です。
月面実験は低重力下で行われるので,操作時の重力パラメータの制御は難しい問題ですが、我々が用いた実験装置は,重力パラメータを考える必要のない固定床による還元反応器を設計・製作したものです。
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月の土地を購入しました。「第二期販売地」となっているので,結構買う人がいるということですね。ちなみに土地は1人あたり1エーカーで,北緯22-24度,西経30-34度だそうです。
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ハロンの分解および再資源化技術の開発 (現在は行っていません)
ハロンガスはこれまで,ガス系消化剤として幅広い分野で使用されてきましたが,近年,ハロンガスはオゾン層破壊や地球温暖化の原因となることがわかり,現在では生産されていません。しかし今でも多量のハロンガスが存在しているので,適切な排気システムが必要とされています
本研究では,ハロンガスの効果的な処理方法を開発することを目的としています。ハロンガスを高温で熱分解し,それに伴う生成ガスを適切な吸収材によって吸収し固定化し,無害化することを考えました。
ハロン分解によって生成する臭素やフッ素を効率的に吸収するための材料を開発しています。また,吸収剤とこれらのガスとの反応機構を解明しています。
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ハロン分解用の実験装置。
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ハロン分解後のガスを吸着することができる焼成ドロマイト(マグネシア33%,カルシア64%)。左が原料、右が反応後。
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潜熱蓄熱システムの開発 (現在は行っていません)
熱エネルギーの需要と供給のギャップを埋めるため、または自然エネルギーや工場排熱の有効利用のための技術のひとつとして、潜熱蓄熱があります。潜熱蓄熱は相変化を利用する方法で、主な特徴としてはエネルギー密度が高いこと、出力温度がほぼ一定であることなどが挙げられます。エネルギー密度が高いので、顕熱蓄熱と比べて蓄熱体積を小さくすることができます。また適当な温度の相変化剤を選ぶことにより、簡単に所定の出力温度を得ることができます。
潜熱蓄熱では蓄熱槽の下流で蓄熱・放熱速度が遅くなるという従来の欠点を補うために、我々は蓄熱槽内の融点分布に傾斜を付けたシステムを開発しました。
現在は冷房などに使用可能である10℃前後の融点を有する潜熱蓄熱材を利用した潜熱蓄熱システムを開発しています。特に廉価な潜熱蓄熱材を開発することを目的としています。例えばココナッツは86 %の脂肪酸を有し、このうち50 %はラウリル酸であり、15 %はカプリン酸です。このカプリン酸とラウリル酸の混合物はココナッツから精製することができ、この相変化材を用いた潜熱蓄熱システムが完成すれば、フィリピンなどにで適用することが可能となります。
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ケミカルヒートポンプの開発 (現在は行っていません)
我々は現在までにアセタール加水分解系、パラアルデヒド系、イソブチレン/水/第三ブチルアルコール系の冷熱発生用ケミカルヒートポンプを提案しました。
このうちパラアルデヒド系ヒートポンプは、パラアルデヒドとアセトアルデヒドを作動媒体とし、圧縮式ヒートポンプに化学反応を組み合わせたケミカルヒートポンプです。本システムは、主に吸熱反応器、圧縮機、発熱反応器、膨張弁で構成されます。吸熱反応器では酸触媒存在下で液体パラアルデヒドの解重合反応が低温(10℃程度)で起き、反応により生じたアセトアルデヒドが気化します。このときの蒸発潜熱と化学反応熱を冷熱発生として用いるので、作動媒体質量当たりの冷熱発生量が大きいことが、本ヒートポンプシステムの特徴です。
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パラアルデヒド/アセトアルデヒド系ケミカルヒートポンプのシステム
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