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論文題目「熱プラズマを用いたメタンの熱分解による水素とナノ炭素材料の合成」

井原歩夢

1. 諸言
水素は二酸化炭素を排出しない燃料として注目されている.水素の合成法として,天然ガスを用いた水蒸気改質法が広く使われているが,プロセスの過程で二酸化炭素を排出する.

そこで,熱プラズマを用いた炭化水素の熱分解が注目されている.利点として二酸化炭素を排出せず,ナノ炭素材料と水素を同時に合成できるということが挙げられる.これまで,直流アーク,三相交流アーク,ロングDCアークを用いたメタン分解プロセスが報告されている.本研究では,大規模メタン処理プロセス構築を目的とし,先述の熱プラズマ源と比較して最もエネルギー効率に優れる多相交流アークを用いたメタンの熱分解による水素とナノ炭素材料の同時合成を行った.

2. 実験装置および実験方法
多相交流アークを用いた実験条件は,プラズマガスとしてAr(60 L/min),原料ガスとしてCH4 (5.0, 7.5, 10, 12.5 L/min),電流値120 A,圧力80 kPa,電力を約30~40 kWとした.

気体はガスクロマトグラフを用いて分析し,ガス組成から分解率,水素転換率を算出した.また,単位電力当たりの水素生成量をエネルギー効率として評価を行った.

3. 実験結果
メタンの分解率において,メタン流量による影響はほぼ見られず98%ほどであった.したがって,今回の条件下においてほぼ完全に熱分解ができている.また,メタン流量の増加に伴い転換率は減少する様子が確認された.

原料のメタンに対する水素収支において,メタン流量の多い条件ではアセチレンの生成割合が高いことが示された.水素に転換されなかったものはアセチレンとして生成していることが明らかとなった.

メタン流量の増加に伴いエネルギー効率は上昇する傾向が見られた.メタンの分解エネルギーは2150 kJ/molであり,導入するエネルギーから完全分解できるメタンは約18 L/minと算出できる.したがってさらなるメタン流量の増加によってエネルギー効率の改善が可能である.また,最大で30 L-H2/kWhほどのエネルギー効率を得ることができた.

4. 結言
多相交流アークによりメタンを熱分解し,気体生成物の評価を行った.多相交流アークを用いることでメタンをほぼ完全に熱分解することができた.さらに現段階でのエネルギー効率は最大で30 L-H2/kWhほどとなることが示された.これらの知見をもとに多相交流アークを用いた大規模メタン処理プロセス構築への応用が期待される.

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