1.緒言
水プラズマは,熱プラズマの一種であり,液体状態の水を用いてプラズマを発生させる装置である.高い比エンタルピーと,豊富なラジカル種の存在による高化学活性環境などの特徴を有する.
フッ素含有有機物とは,分子内にC-F結合を持つ有機物の総称である.PFAS(Per-and polyfluoroalkyl substances)やPTFE(Poly tetrafluoroethylene),フロン類がこれに該当する.冷媒や消火剤,コーティング剤として幅広く利用されてきたが,近年は人体や環境に対する有害性が指摘されている.フロン類はオゾン層破壊の原因物質であることが判明し,ウィーン条約等で製造,輸出入が規制されている.PFASも一部の物質で発がん性,環境有害性が指摘されており,ストックホルム条約の規制対象となっており,フッ素含有有機物の適切な分解手法の確立が求められている.
そこで,本研究ではフッ素含有有機物を熱プラズマで無害化することを目的とし,これらの物質の代表物質として,PTFEを用いた分解技術の実証を行った.また,PFAS処理の二次廃棄物である使用済み活性炭を処理するため,活性炭分解実験と,活性炭の挙動解析を行い,被処理物質の分解挙動に寄与するパラメータの検討を行った.
2.実験方法
プラズマトーチはカソードノズルと陽極板から成り,高圧の旋回水流を放電領域に供給することで,プラズマを形成した.電流は直流350 Aに設定した.棒状のPTFEを,水冷管を通してプラズマジェットに投入することで分解を行った.PTFEはプラズマジェット中で原子に分解され,フッ素原子はHFに転換する.スクラバーは生成ガス中のHFを回収,中和する装置であり,70
gのCa(OH)2が溶解した水230 Lが循環し,シャワー状で生成ガスと接触している.HFはスクラバー水に溶解した後,中和され,スクラバーの下部にCaF2として沈殿する.スクラバー通過後のガスを30秒間計3回,スクラバー水を5サンプル,固体はスクラバーの下部に沈殿した固体を全量回収した.
固体はXRDとXPS,液体はLC-MS/MS,ガスはGC-MSを用いて定性分析を行った.さらに,XRD結果にRIR法を適用し,固体中のCaCO3およびCaF2の質量分率を測定した.
3.実験結果および考察
本実験で得られた沈殿固体のXRD結果では,CaCO3とCaF2に由来するピークが存在した.加えて,有機物や固体炭素由来のピークやハローパターンは確認されなかった.固体中には副生成物である有機フッ素化合物は存在していないと考えられる. RIR法から,フッ素回収率は25.9%だった.また,Ca2+の収支と溶解度積から,スクラバー水中のCaF2量を求めたところ,フッ素転換率は34.4%だった.
さらに,生成ガスのGC-MS分析結果から,PFCAs(Perfluoro carboxylic acids)の存在を確認した.既往の研究事例においても,PTFEの熱分解処理の副生成物として,PFCAsの存在が報告されている.PTFE熱分解では,C-C結合はC-F結合と比較して切断されやすく,切断箇所にはフッ素ではなく,酸化雰囲気下で生成したカルボキシ基が結合しやすいと推測される.また,GC-MSで検出したフラグメントには,C, H, F原子を含むイオンは確認されなかった.このことから,生成物中のC-F結合は,再結合ではなく,未分解由来と推定される.
4.結言
本実験では,分解したPTFE中のフッ素のうち,34.4%をCaF2に転換することができた.さらに,生成したCaF2の75%を固体として回収することに成功した.今後,分解の影響因子の特定および反応機構の解明が望まれる.