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論文題目「多相交流アークを用いたホウ化タングステンナノ粒子の合成」

長田聖

1.緒言
従来の放射線遮蔽材の複合材料として使用されている鉛は,毒性や脆性が問題視されていた.そこで鉛の代替材料として,ホウ化タングステンが有望視されている.
ホウ化タングステンは,熱中性子を吸収し二次ガンマ線の発生を抑制するホウ素と,高密度で電子を多く持ちガンマ線を遮蔽するタングステンから構成される.またレイリー散乱理論によると,粒子径が20 nm未満であればナノ粒子化させ透明母材に均一分散させた場合,光は散乱されずに透過する.これらの点から,ホウ化タングステンは高い放射線遮蔽能力と透明性を両立する複合材料として期待される.
ホウ化タングステンナノ粒子の合成法として,高周波熱プラズマ(ITP)法や直流アーク(DC)法を用いた例は報告されているが,多相交流アーク(MPA)法を用いた合成例は確認されていない.MPA法は,従来の合成法と比べエネルギー効率が高く,プラズマ体積が大きく,さらに急速冷却が可能であるため,ナノ粒子合成に適した手法である.
そこで本研究では,MPA法を用いて,ホウ化タングステンナノ粒子の合成を試み,供給原料モル比,供給速度が生成物に与える影響を調査した.

2.実験方法
多相交流アーク発生装置は,放射状に配置した電極に位相の異なる交流電圧を印加することで,連続的に熱プラズマを発生させる.Wを主成分としてCeO2を2wt%添加した直径6 mmの電極を用い,6相交流でプラズマを発生させた.シールドガスとしてArガスを電極1本あたり5 L/min,電極角度は水平方向から上に5度,電極間距離は60 mm,雰囲気圧力は100 kPa,電流値は85 A,周波数は60Hzとした.
原料粉体にはタングステン(1-2 μm),ホウ素(45 μm)を使用し,混合比はW : B = 1 : 6, 1 : 4, 1 : 2.5, 1 : 1,供給速度は0.3, 3.0 g/minとした.
フィルター部で回収したナノ粒子を,粉末X線回折(XRD, MiniFlex600-C),透過型電子顕微鏡(S/TEM, JEM-2100HC/F)を用いて分析した.

3.実験結果および考察
本実験では,いずれの条件においても,球形で平均粒径が10~30 nm程度のナノ粒子が合成された.
XRDパターンでは,すべての条件においてβ-W,ホウ化タングステンのピークが確認された.確認されたホウ化タングステンの種類はW2B, WB, W2B5, WB4であり,ほとんどの条件でW2Bが確認された.B, B2O3のピークは確認されなかった.そのため供給したホウ素はタングステンに凝縮し,全て反応したと考えられる.
またホウ化タングステンナノ粒子の生成率を調べるため,XRDのピークを元に相対積分強度比を計算した.相対積分強度比を計算すると,全条件を通して,供給原料中のホウ素の割合を増加させるとホウ化タングステンの生成量が増加するという傾向がみられた.これは,供給原料中のホウ素の割合を増加させるほど,タングステンの核へのホウ素の凝縮・反応を経て,粒子成長が起こりやすくなるためだと考えられる.

4.結言
本研究では,MPA法を用いたホウ化タングステンナノ粒子の合成を試みた.供給原料モル比,供給速度を変化させることによる粒子径,形状,生成物割合への影響が確認できた.本研究がMPA法を用いたホウ化タングステンナノ粒子の大量生産に応用されることが期待される.

プラズマ・核融合学会 九州支部第29回支部大会 講演奨励賞
(2026年3月)
多相交流アークを用いたホウ化タングステンナノ粒子の合成

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