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論文題目「メタン熱分解における多相交流アークの変動現象」

織田啓希

緒言
多相交流アーク発生装置は,同心円状に配置した電極に位相の異なる交流電圧を印加することで,連続的にプラズマを発生させる.熱プラズマの中でも高いエネルギー効率や大きなプラズマ体積,遅いガス流速といった利点を持つ.多相交流アークのより効率的な工業プロセスへの適用には,アークの安定性や高温場の温度特性の解明が必要不可欠である.

近年,プロセス由来の二酸化炭素の直接排出がない水素の合成方法として,熱プラズマを用いて炭化水素を熱分解する方法が報告されている.これは,水素と同時に産業上の利用価値のあるカーボンブラックなどの炭素材料を合成できるという利点がある.炭化水素源としてメタンをこの手法に利用した例が報告されており,多相交流アークにおいてもメタン熱分解を行う上で,変動現象を理解することは重要である.本研究では,メタン熱分解における多相交流アークの変動現象の解明のため,励起種の空間分布と温度分布の計測を行った.

実験方法
本研究では,Ar雰囲気で発生させた多相交流アークに,下側からメタンを0.5, 1.5, 2.5 L/minの3条件で供給し,励起種の空間分布と温度分布を評価した.プラズマ発生の操作条件は,放電相数を6相,電流値は85 A,雰囲気圧力は80 kPa,周波数は60Hzとした.

今回は,分光器を用いた発光分光計測と,Ar(795±5 nm), H(656±5 nm)原子とC2(515±5 nm)のスペクトルが透過するバントバスフィルタに高速度カメラを組み合わせた計測を行った.分光結果でえられたHα(656 nm),Hβ(486 nm)の輝線スペクトルを用い,これらの発光強度の比から温度を算出するボルツマンプロット法により温度を算出した.

実験結果及び考察

Ar, H原子の発光はほぼ同じ位置で見られるのに対し,C2の発光はプラズマ下流に大きく広がり,アークを囲むような場所で生じている.Ar, H原子は高温部分で発光が強くなるが,C2は高温のアーク部分には存在しづらく,アークから離れた低温部で再結合し発光が強くなるためである.

H原子の発光によるアークの存在確率分布においては,メタン流量の増加に伴い,アークが及ぶ範囲の拡大が見られた.これは,電離しやすいC原子が増加して電子密度が大きくなることで,アークに働くローレンツ力が大きくなるためである.

発光分光計測により算出した温度分布の結果では,いずれの条件でもメタンの分解に必要な温度領域が形成されており,プラズマ下流にかけて温度が低下していた.また,メタン流量の増加によりエネルギーがメタンの解離に多く使われるため,温度が低下した.

結言
本研究では,高速度カメラ計測と発光分光計測により,メタン熱分解における多相交流アークの励起種の空間分布と温度分布を解明した.実用化の上で重要な反応場の制御につながる知見が得られた.

The 14th Asian-European International Conference on Plasma Surface Engineering
Student Award
(2025年11月)
Spatial Disctribution of Exicted Species in Multiphase AC Arc during CH4 Pyrolysis
 
  
 
プラズマ・核融合学会 第42回年会
プラズマフォトイラストコンテスト 最優秀賞(金賞)
(2025年12月)
色鮮やかに躍る多相交流アークによるメタン熱分解

 

国際学会

  • (Student Award) Haruki Oda, Manabu Tanaka, and Talayuki Watanabe: Spatial Disctribution of Exicted Species in Multiphase AC Arc during CH4 Pyrolysis, The 14th Asian-European International Conference on Plasma Surface Engineering, P-093 (2025.11.5 Phuket, Thailand).

国内学会

  • 織田啓希, 一二碧利, 田中学, 渡辺隆行: Ar-CH4雰囲気における多相交流アークにおける変動特性, プラズマ・核融合学会九州・沖縄・山口支部第28回支部大会研究発表論文集, p.19-20, P-5 (2024.12.21 西新プラザ).
  • 織田啓希, 田中学, 渡辺隆行: メタン熱分解における多相交流アークの変動現象の可視化, 九州大学×昭栄化学工業研究交流会 (2025.8.4 昭栄化学工業糸島事業所).
  • 織田啓希, 田中学, 渡辺隆行: メタン熱分解における多相交流アークの温度変動特性, プラズマ・核融合学会第42回年会, 01Bp01 (2025.12.1 京都工繊大学).