1. 諸言
窒素固定とは,大気中の不活性な窒素を,利用可能な反応性窒素へ変換するプロセスであり,窒素肥料製造において基盤となる段階である.現代の窒素固定法の主流であるハーバーボッシュ法は,20世紀初頭に開発され,化学肥料生産により,食糧供給に大きく貢献した.その一方で,近年では原料製造過程でのCO2の大規模排出による環境負荷が問題視されている.
このような問題解決のため,熱プラズマを用いた窒素固定法が提案されている.この手法は窒素固定にCO2排出をしないため環境負荷が小さい.また,プラズマ固定窒素が植物の成長促進において,従来の化学肥料より優れるという報告もある.しかし,低いエネルギー効率が課題であり,普及の妨げとなっている.
本研究では,熱プラズマによる窒素固定法のエネルギー効率向上を目的とした.
2.実験方法
本研究で使用した実験装置は,DC定電流電源装置,水冷管,プラズマトーチから構成される.電極は銅製であり,電極間に直流電圧を印加し,アーク放電を発生させた.空気が放電領域へ供給されると,窒素・酸素分子は速やかに解離され,その後の急冷過程により,NOおよびNO2が生成される.以後これらをNOxと呼称する.
実験はプラズマ処理空気をビニール袋に溜め,検知管を用いて分析を行った. 実験は大気圧下で行われ,アーク電流6~9.5 A,Air流量5~15 L/min,電極間距離2~16 mm,陽極ノズル径1.8~3.0 mmと変化させNOx生成に及ぼす影響を評価した.
気体の定量分析は検知管を用いて行い, NOx生成速度(Production rate, PR),投入電力をPRで割った値で定義されるエネルギー消費量(Energy consumption, EC),単位質量あたりの空気に対する投入電力(Specific energy input, SEI)を算出し,各種パラメータについて評価した.
3.実験結果および考察
流量変化の代表として,陽極ノズル径3.0 mm ,定電流6 Aにおいて,空気流量の増加に伴い,NOx濃度は減少する傾向が得られ,PRは増加する傾向が得られた.これは,単位時間当たりに処理される空気量が増加したことでNOx生成量が増加したことを示している.
また,空気流量の増加とともにSEIおよびECは減少する傾向が得られた.以上より,流量の増加に伴うSEIの減少とともにNOx濃度は減少する一方,PRは増加するため,ECは改善されることを示している.
4.結言 空気流量の増加によりPRは増加し,投入電力の低下によりECは低減され,昨年度の値6.10 MJ/mol-Nから改善が見られた.今後は更なるEC低減を目指し,アークの安定化や,運転条件の最適化を図る.