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論文題目「ロングDCアークを用いたメタンの熱分解によるナノ炭素材料の合成」

内村博宣


緒言
グラフェンやカーボンナノチューブなどのナノ炭素材料は,高い熱伝達性や電気伝導性,弾性率など非常に有用な材料特性を有している.ナノ炭素材料とH2の同時合成プロセスとして,熱プラズマを用いたメタン熱分解が報告されている.

熱プラズマの発生手法の一つであるロングDCアークは,通常のDCアークよりも1桁以上長い電極間距離を有する.そのためプラズマ体積が大きく,材料の大量処理が可能である.また,原料ガスの滞留時間が長く,均一な加熱が可能である.

本研究では,ロングDCアークを用いたメタンの熱分解によりナノ炭素材料の中でもナノグラフェンを合成することを目的とした.

実験方法
ロングDCアーク発生装置において,電極はCu電極を用い,電極間距離は230 mm,電流値は8, 10, 13Aとした.また,上部からAr(30 L/min)とCH4(0.5 L/min),H2(0, 2.0 L/min)の混合ガスを供給した.フィルターで回収された固体生成物はラマン分光法,走査型電子顕微鏡(SEM, SU8000 日立ハイテク)で分析した.

実験結果と考察
SEMを用いてサンプルの形態観察を行った.13 A,原料ガスCH4(0.5 L/min)とH2(0.0,2.0 L/min)の各条件におけるSEM画像において, H2を添加していない場合,粒状の凝集体とシート状の構造体が混在している.それに対し,H2 2.0 L/minの場合では,ほとんどシート状であることが確認できた.これは,固体表面の不対電子である,ダングリングボンドにH2が結合することで平面構造が安定化したためであると考える.また,電流値による構造体の違いはあまり見られなかった.

次に,ラマン分光法での分析結果では,炭素材料特有のバンドであるD band,G band,2D bandが確認できた.SEM画像,2D bandの存在から,ナノグラフェンの合成に成功したと考えられる.

固体生成物のラマン分光法による分析結果から算出されたID/IG値が小さいほど,sp2結合をもつグラファイト構造の割合が高くなることを示す.電流値を上昇させてもID/IG値に大きな変化が見られない一方,水素添加によりID/IG値は著しく低下した。これは,水素添加によりダングリングボンドが終端し,局所的な結晶格子の乱れが抑制されるため,D bandの強度が減少し結果としてID/IG値が小さくなると考えられる。

結言
ロングDCアークを用いたCH4の熱分解により,シート状に連なったナノ炭素材料の合成に成功した.生成された固体の形態やID/IG値に対して,電流値による影響より,H2添加による影響の方が大きいことが示された.

れる.

5.結言
本研究では,Li原子の発光と自己吸収現象を利用し,高速度カメラによる2次元的なLi原子の数密度分布を得ることができた.多相交流アークによるナノ粒子生成機構の解明のための,大きな知見を得ることができたといえる.


九州大学×昭栄化学工業研究交流会
ポスターセッション優秀賞
(2025年8月)
ロングDCアークを用いたメタン熱分解による水素製造

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