九州大学工学部化学工学科
九州大学大学院工学府化学工学専攻
九州大学大学院工学研究院化学工学部門

Contents

教員メッセージ 池上 康寛 助教

研究紹介

「細胞の足場基材の開発」

私たちの体を構成する組織は、細胞、足場(細胞が生存し機能するための環境)、サイトカイン(細胞の機能を制御するシグナル分子)の三つの要素から構成されています。iPS細胞などの登場により、種々のヒト細胞を作製可能になったことで細胞移植による治療が近年実現されてきました。この移植細胞の機能を最大限引き出すためには、足場やサイトカインなどの細胞周囲環境を細胞の生育に適した状態に整えることが重要です。私の研究では、生体内の足場である細胞外マトリックスを模倣した足場基材として、様々な生体材料から成るファイバーを開発しています。ファイバーの組成や表面構造、配向性、三次元空間配置を制御することで細胞挙動の制御を実現する足場基材の開発、およびその医療応用を目指しています。

化学工学の必要性

革新的な医療技術の発展と普及の背景には、化学工学と生物学の密接な連携が重要な役割を果たしています。化学工学の方法論と考え方をもとに、生命現象や生物学的プロセスを理解・分類・整理し、制御することで「生物のチカラ」を効率的に利用することが可能となるのです。

例えば、細胞を足場基材と共に患部へ移植する場合、適した基材設計を欠いては効果的な細胞移植を実現することはできません。そこには、細胞に必要な酸素や栄養素・老廃物など様々な物質の反応、輸送プロセスや伝熱プロセスなど化学工学のエッセンスが詰まっています。また、材料から最終産物である医療用デバイスを作り上げるには、「プロセス全体を俯瞰し、単位操作へと細分化することで解決すべき課題を明確にして解決する能力」が重要であり、まさに化学工学の方法論が活きるのです。

在校生、高校生へのメッセージ

化学工学科では、「モノづくり」における方法論を学ぶことができます。授業や演習、卒業研究の中で身につける化学工学の考え方は、大学、大学院を卒業後、たとえ研究テーマが変わったとしても必ずや役に立つでしょう。皆さんも是非化学工学科で学び、基礎研究を産業へ発展させ社会実装する上でなくてはならないモノづくりのスペシャリストになりましょう。

Profile

池上 康寛 助教
2021年 九州大学大学院工学府物質プロセス工学専攻(現 化学工学専攻)博士後期課程 修了(博士(工学)取得)。
2021年 東京大学生産技術研究所物質・環境系部門 特任研究員。
2022年 Beyond AI研究推進機構 特任研究員(兼任)。
2023年 九州大学工学研究院化学工学部門 助教(現職)。
組織工学による再生医療や細胞アッセイデバイスが専門。
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